数年前まで、多摩川でよく釣りをしていました。
自転車で10分程度で多摩川につくので、身近な釣り場。
安価なスピニングタックル一本に、同じく安価なスピニングリール、そして、リールに巻いたPEライン(1.5号か2号)というかなりお手軽なタックルで釣りをしていました。
対象魚は鯉!
実は鯉自体はバスの外道で釣ったことはありましたが、社会人になり釣り堀以外では狙うのは初めてでした。
当時はお客さんにオススメするために、身近な「パン鯉」という釣りを体験しようというごく単純な理由で通っていたのです。
しかし、僕は鯉が恐ろしくなって釣りができなくなりました。
今回はそんな話です。
シンプルで楽しい釣り
パン鯉という釣りを知っていますか?
その名前の通り、パンで鯉を釣る方法です。
まずは簡単に釣り方を説明します。
用意するものは、スピニングタックル一式とパンとハサミとフィッシュグリップだけ。
スピニングタックルはバス用のものでも良いですし、ロックフィッシュ用でも何でも良いです。
やわらかめであれば、シーバス用でもオーケー!
食パンがベストですね。
食パンとハサミ
食パンの耳と白い部分をカットして分けます。
そして、耳の部分は1センチくらいに切り、白い部分はざっくばらんに千切ります。
これで下準備完了です。
まずは、釣り場では目視できる鯉を探すのが先決です。
1匹だけ泳いでいるケースもありますが、そう言う個体を狙うのではなく競争心を煽るために、群れでいる場所を探します。
多摩川の場合、警戒心が強いため静かに近づき、足音にも注意しながら接近しましょう。
ターゲットとなる鯉の群れを発見したなら、その群れの上流側に食ばんの白い部分を投げましょう。
この時、上流側に食パンの白い部分を投げて、そのまま流します。
その白い部分に気がついた鯉たちが食パンを食べるまで辛抱強く投げ続けましょう。
ここで焦ってはいけません。
鯉が安心して餌をパクパクして、少し時間を置いたら、食パンの耳に針をつけた仕掛けを用意。
スピニングタックルでPEライン直結で太めの針を結びます。
その太軸の針に食パンの耳を付けた針をキャストします。
食パンの白い部分に針付きの耳をうまく紛れ込ませるのが、釣果をあげるコツです。
流れてくる白いパンと間違えて、食パンの耳を「パクっ」としたらすぐにフッキング!
鯉の重量感が伝わってくるはずです。
よく引くので楽しいですよ!
そんなこんなで、一年くらい遠出したくない時にパン鯉を楽しんでいたのです。
巨鯉の眼
楽しい楽しいパン鯉を続けていたのですが、ある日事件がおきます。
これまで、鯉を釣り続けていたのは、50センチくらいから大きくても70くらいの鯉。
しかし、その日は違いました。
ある日、いつも通りパン鯉をしていると明らかにいつもと様子が違う。
何が違うのかと言うと、鯉が遠慮している感じがしました。
いつもパクパク元気にパンを食べる鯉の勢いがない・・・
どうしたものか・・・と釣りをしても中々ヒットしない。
しびれを切らして、思いっきり大きいパンを付けて流してみると、見るからにデカイ鯉がまるでジョーズのごとく波を出して近づいてきます。
これは!っと期待通りに、パンに食らいつく巨鯉。
二、三回バイトして、針を飲み込んだのを確認して、大合わせ!
イキナリ、釣り人生で味わったことのない重量感が手元に伝わりました。
ドシンとくるその引きは、まさにメートルに近い巨鯉のそれ・・・
ドラグを緩め、時間をかけ、下流まで下りながら獲る作戦。
川の流れと共に、走る巨鯉に心踊りながら、竿をしならせる・・・
見ていたおじさんもついつい立ち上げって応援してくれていました。
数十分の格闘後、その巨鯉はやっと観念したのか、岸に寄ってきます。
普段なら、フィッシュグリップを使わずに針だけ外してリリースするのですが、その時はなぜかフィッシュグリップで掴もうと考えてしまったのです。
鯉の下唇をフィッシュグリップで掴んで、その巨体を陸にあげようとしたその時でした。
サクっ
巨体の重さに鯉の唇が耐えきれず、唇が裂けてしまったのです・・・・
(ランディング方法をミス)
その時、まるでホラー映画に出てくるバケモノのような眼で、その巨鯉の大きな目がこちらを見たのです。
ギョロッとしたその目つきはまるで、「お前、やったな!怒」とも思えるもので、とても魚の目つきとは思えず、僕は尻込みしてしまいました。
巨鯉と目があって、数秒してすぐに針を外そうと思いましたが、その巨鯉が怖くて触れない・・・
止むを得ず、不思議と暴れない巨体の口先をフィッシュグリップの先端で針を外し、リリースしました。
それにしても、あの眼・・・・
長年釣りをしてきましたが、魚に睨まれるなんてことは初めての体験でした。
あの巨体は、おそらく数十年は生きているでしょう。
まるで、多摩川の神様にイタズラしてしまったような、神社にイタズラしてしまったような気分になり、落ち込みながら帰ったのを今でもよく覚えています。
あの眼は一体何だったのか・・・
とても魚の眼とは思えませんでした。
それ以来、多摩川で鯉を釣るのはやめました。
あの眼に遭遇したくないと言う思いが強いです。
僕は一体、何を釣ってしまったのでしょうか。
今となっては不思議です・・・
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