黄色、オレンジに染まる(黄金色)産卵の時期にアイナメのオスはメスを誘い、卵塊をメスに産んでもらい、自らの子孫を外敵から守るため、あらゆる力を尽くして卵を守ります。
そんなアイナメの産卵行動やオスの婚姻色からどんなことが言えるのかについて考察してみました。
アイナメの基本的な生態についてはこちら。
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アイキャッチ画像はこちらのHPから転用しました。
実は本当の婚姻色は人には見えない?
婚姻色の役割として、縄張り意識と求愛行動の2つの意味合いがあると一般的に言われます。
アイナメの場合も、両方の意味合いがあると思われます。
その証拠に、海の魚の中では唯一婚姻色を出す魚がアイナメなのです。
この婚姻色は縄張りを同魚種であるアイナメの性別問わずに強く主張しているものと思われます。
仮に婚姻色をわざわざ出して同魚種に主張するということは、アイナメには婚姻色が強く見えてなくてはいけません。
例えば、アイナメをワームを狙う場合、オレンジ色や黄色にラメの入った派手なカラーは威嚇カラーとして機能します。
そのことから、婚姻色(オレンジ・黄色)に激しく反応を示す要因があると推測できます。
子供の頃から図鑑でみたアイナメの婚姻色はとても鮮やかで印象に残っています。
でもなぜこんな色をわざわざ出すのか不思議に思っていました。
それが最近、淡水魚の研究からヒントを得ることができました。
一般的に婚姻色は人の目から見れば、鮮やかな色に見えることも多いです。
川の魚の場合、婚姻色はアユ、ウグイ、オイカワなどにも見られます。
特に関東で「ヤマベ」と呼ばれるオイカワは体表(ヒレ)にオレンジ色の鮮やかな婚姻色を出します。
実は婚姻色の出たオイカワを紫外線カメラで観察すると、見事にヒレ部分の婚姻色だけが強く主張されています。
(参考文献:「虫や鳥が見ている世界」 浅間茂 著)
これは人間の目でみることが出来ない紫外線という世界が魚にははっきり見えているという確固たる証拠と言えるでしょう。
(人間は簡単に言えば、赤・青・緑の3色しか見えませんが、多くの魚は人間が見える範囲からズレ、紫外線(紫外色)も見ることが出来るのです。)
アイナメは産卵時は浅瀬に移動する魚であり、そのオレンジ色・黄色の婚姻色はオイカワの例と一緒で、紫外線に反射されて同魚種に縄張りをはっきり認識させ、かつ求愛行動をするためのものではないかと思われます。
産卵の段階に応じて婚姻色の意味合いが変わってきます。
人間には鮮やかな婚姻色でも魚からすれば、紫外線を強く反射する色であるため、ひと目で発見しやすいのです。
人間には見ることの出来ない特殊な色合いが魚には見えているのかもしれません。
こればかりは、アイナメの目が科学的に研究されない限り解き明かされない謎でしょう。
婚姻色の主張が強いアイナメは、海洋生物の中でも卵をしっかり守り、縄張りを強く主張し、求愛も激しく行います。
人間の言葉で表現すれば、極めて男らしい生存戦略と言えるかもしれませんね。
少し脱線しますが、紫外線がはっきり認識しているアイナメにとって、小魚のお腹や背中の銀色のキラメキは人間にはイメージできない色に見えているかもしれません。
なぜなら、光が反射する小魚のウロコなどは紫外線も反射しているからです。
アイナメがスピナーベイトで釣れるのは、好奇心や縄張り意識による攻撃、食性の他に、海中で反射している紫外色による目の錯覚による条件反射かもしれません。
アイナメの求愛行動
産卵時期になり条件の整った浅瀬の婚姻色のオスをみたメスが「健康的で良いオス」を見分けるために婚姻色の鮮やかさを見ているのではないかと考えています。
健康的で良いオスとは僕が勝手に言っているだけですが、良い餌をとっている個体のことです。
いくら鮮やかな婚姻色と言っても個体によって鮮やかさが違います。
結局その婚姻色が発色するには、餌からとった栄養と色素が大事ですよね。
(甲殻類の場合はカルテノイド由来?)
つまり、良い餌を食べているオスの個体こそ、綺麗で健康的な婚姻色を発色し、卵をたくさん生む大型のメスを誘うことができるのだと考えています。(求愛行動)
ただし、餌からではなく、体内で色素を作れることが出来たのであれば、この理論は総崩れですが・・・・笑
闘う黄金色のアイナメ
アイナメのオスは産卵場所の卵塊を命をかけて守ります。
仮に相手が自分よりも遥かに大きいタコだったとしても闘うのです。
その卵塊を守る姿は厳しい自然を生き抜く野生そのものです。
魚なのにオーラがありますよね。
そんなアイナメのオスは卵塊を食べる外敵からも守り抜くわけですが、その外敵の中にはメスのアイナメも含まれています。
他のアイナメの卵塊はメスにとっては、邪魔な存在であり(嫉妬の対象なのか?笑)同時に産卵後のメスにとって栄養価の高い食べ物でもあります。(産卵でお腹が減っている)
他にも理由はありますが、こうしたペアリングしたメス以外からもオスは守り抜かなくてはいけません。
一度自分が産卵させたメスの卵塊は命をかけて守るのがオスの役割であり、義務でもあるのです。
また、スニーカーと呼ばれる他のオスが産卵場所を狙っているケースもあり、産卵場は常に闘いの場所でもあるのです。
そんな厳しい闘いを終えたオスは生物的に成熟し、成長していると言え、厳しい自然環境の中での命の連鎖を感じさせる風格を漂わせます。
この時期を過ぎたオスにリスペクトせざるを得ないです。
東北に比べてサイズの小さい横浜のアイナメはサイズに似合わずにしっかりした風格の魚が釣れることがあります。
僕はこの産卵行動をしたかどうかで魚の風格が決まってくるのでは?という妄想をしています。笑
まさにアイナメにとって、オスにのみ与えられた「ゴールドエクスペリエンス(黄金色の体験)」なのかもしれません。
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