「紳士のスポーツ」フライフィッシングとラグビーに共通するマインド



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僕がラグビーをはじめて3年目の秋、高校最後の試合での出来事。

相手のキャプテンとフルコンタクトしてグランドに倒れ込んだ僕、密集した別の相手選手と足が絡まり、敵将が僕の身体の上に覆いかぶさった。

動けない僕に敵将が目の前で声をかけてきた。

「抜けられるか?」

この敵将はのちに高校日本代表候補になったと後から聞いた。

技術、強さ、スピードがスポーツマンとしてどれだけ優れていても、本物のラガーマンになるにはその精神性が最も重要だと、奇しくも高校最後の試合で学んだ。

この試合で僕たちは敗退し、花園への切符は敵将率いる相手チームが掴み取った。

 

あの時から10年の時を経て、今唐突に思うことがある。

それはラグビーとフライフィッシング(キャッチアンドリリース文化)の精神は根本が一緒ではないか?ということ。

 

ラグビー強豪国で釣りが盛ん?

 

かなり主観的ではありますが、ラグビー強豪国について調べていると、どことなく水の匂いがする!

実際に、ラグビー大国は釣り大国である可能性が非常に高い!

色々調べてみてもラグビー強豪国には釣り文化も存在しています。

(と言っていますがどの国にも行ったことはありません、ごめんなさい)

 

記事作成当時の世界ランキング順にニュージーランド、ウェールズ、イングランド、アイルランド、南アフリカ、オーストラリア、日本、フランス、スコットランド

他にもトンガ、フィジー、サモアなどの強豪国も太平洋上の島国

 

こうした強豪国の中でもイギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4カ国)では上流階級の間ではフライ・フィッシングという釣り方が主流(庶民向けの釣りもあるそう)で、ルアーやフライでのマス釣りが非常に盛んな地域でもあるのです。

同じくニュージーランドではフライフィッシャー天国と呼ばれ、ほとんどが着水と同時に決着がつき、さらに巨大なサーマンが釣れる誰もが一度は憧れる釣り天国。

南アフリカはインド洋があり、日本でもお馴染みの魚(鯛、青物、ハタ)なども釣れるなど釣りやマリンスポーツが盛んです。

日本は世界有数の海洋大国であり、釣りや漁という文化の歴史も非常に古くからありますしね。

 

紳士のスポーツ「ラグビー」と「フライフィッシング」

 

紳士のスポーツと呼ばれる競技はいくつかありますが、今回は日本開催のワールドカップで盛り上げりを見せた荒れくれ者のスポーツ「ラグビー」と僅か10万人の競技人口しかいない(参考文献:フライフィッシャーNo.292)にも関わらず、圧倒的なリピート性と地域性が偏る釣りである「フライフィッシング」を中心に取り上げたいと思います。

話をわかりやすくするために、フライフィッシングもこの記事ではスポーツという前提で記載していきます。

最近になり、両者の背景にある文化や精神性に驚くべきほど共通点があること、また繋がりがあることがわかってきました。

特にライフワークとしてのラグビーとフライフィッシングに取り組む人たちが大勢いることが、この二つのスポーツの懐や根本的なものの繋がりを示しているのではないかと感じさせます。

もしかしたら、「僕の偏見が生んだとんでも記事になりかねない・・・」と一瞬この記事を世に出すか迷いましたが、こんな観点で記事を書くのも僕ぐらい。

だったら、思い切って出してやろうと思ってキーボードの前にいます。

 

フライフィッシングというスポーツ

 

まずはフライフィッシングから。

羽根を巻き付けるだけで、釣り針が魚を誘惑する虫に化ける。水面(みなも)で繰り広げられるフライ(毛針)を介した人と魚の知恵比べ。フライフィッシングは豊かな芸術性と精神性を備えた深遠なスポーツだ。

日経新聞:知恵比べの水面 フライフィッシング

ことの始まりは日課となっている日経新聞に題された上記記事です。

 

フライフィッシングってスポーツなんだ・・・

 

特に気になるのは「豊かな芸術性と精神性を備えた深遠なスポーツだ。」という点。

日経新聞の記者もいい加減なこと書いているんじゃないか?と当時は不愉快な気持ちになりました。

 

前にもフライフィッシングについて、入門書を買ったり書籍を購入したりして勉強したことはありましたが、どこにもスポーツとしての記載はなかったですし、フライフィッシングがもつ精神性や芸術面まで記載した本は手元になかったのです。

あるのは、フライタイイングの方法やらフライ入門の本ばかり。

いわゆるノウハウ本。

そうしたことから、「本当にスポーツなのか?」と疑いながらもフライフィッシングについて知りたくなり、中古書店で参考文献を探すべく書店を梯子することに。

フライフィッシングに取り憑かれ、そのスポーツをライフワークに取り入れた人たちが書いた本はどれも人生訓や挑戦の日々が自伝のように書かれていました。

写真の本には僕が見てきた釣りのノウハウや考え方ではなく、失敗・経験や喜怒哀楽までもフライフィッシングを通して鮮明に伝わってきました。

数冊読んだだけで、「フライフィッシングというのは人生そのもの」である人たちが多くいることを思い知ったのです。

中でも「ライズ戦記 著 増田千祐」は「全く釣れなかった」という話が本の中にたくさんありました。

通常、全く釣れなかった話というのは、どの分野でもあまりウケる内容ではないのですが、フライの場合、釣れない話が実に面白い!

なぜなら「フライフィッシングは魚を釣るまでのプロセスが本当に面白い」から!

だって、自然を知り餌を突き止めないと釣りが成立しないのだから。

餌を知り、自然を観察する積み重ねがなくては本当に成立しないスポーツであり、この基本的な部分を怠った時、フライは釣れなくなるとも言われます。

釣魚に興味のない日本のアングラーへ「イギリスのフライフィッシングに学ぶ生態系全体を知ること」

 

著者の挑戦だらけの過去をこうして自伝として残してもらえるのは本当にありがたいとさえ思います。

誰も失敗談を好んで書きたい著者は少ないため、そうした部分も紳士的であると評価しています。

 

そして、ある日ビデオ屋(すでに死語?笑)で映画「リバー・ランズ・スルー・イット」を借りてみた時、フライフィッシングや自然の美しさに対する表現が素晴らしいと思いました。

 

ますますフライフィッシングについて調べたくなり、色々と検索したらこんな記事が見つかりました。

フライフィッシングとは、欧米式の毛バリを使う釣りで、その歴史は古く、文献での初出は1800年以上前だという説があるほど。一般的には、発祥は約500年前の英国と言われている。イギリス貴族が始めたということもあり、「紳士のスポーツ」や「もっとも格式高い釣り」と呼ばれることがある。

当時は、小さな虫を模したフライ(毛バリ)を使って、川で鱒を釣るだけだったが、この釣りがアメリカに渡ると、広大な自然に生息する多様な魚種を相手に大発展を遂げた。釣り場も川だけでなく、湖や海へと広がり、その過程でフライフィッシングは市民の釣りとなって、一気にポピュラー化。そうやってフライ、竿、リールの種類もどんどん増えていき、いよいよ商業化されることとなる。

日本に渡来したのは、商業化されるずっと前、今から120年近く前のこと。ブルックトラウト(カワマス)が放された栃木県日光市の山奥にある湯川と湯ノ湖で、幕末に暗躍した武器商人としても有名なスコットランド人のグラバー卿がフライフィッシングに興じたことが日本初とされている。だが実際に、日本で普及したのは、米国でこの釣りが商業化真っただ中の1980年代に入ってからである。

我が人生を狂わせた鱒族とは ー森の生活からみる未来 第83回

 

紳士のスポーツ」や「もっとも格式高い釣り」と呼ばれる

幕末に暗躍した武器商人としても有名なスコットランド人のグラバー卿がフライフィッシングに興じたことが日本初

実際に、日本で普及したのは、米国でこの釣りが商業化真っただ中の1980年代に入ってから

 

つまり、フライフィッシングは紳士の国イギリスで生まれ、上流層に親しまれ、その後アメリカを経て、日本にやってきます。

バスフィッシングの「キャッチアンドリリース」と言う文化も元はイギリスからきているのではないかと思っています。

 

なぜ、ラグビーは紳士的スポーツと言われるのか?

 

さぁ続いてはラグビー。

世界王者・ニュージーランド代表は「オールブラックス」の相性で知られており、世界ナンバーワンのチームと評されています。

なんと、その勝率は75%以上。どのスポーツでもこれだけの勝率を誇るチームは存在しません。

自由で発想豊かなラグビー、パワフルで強靭な突進、どれをとっても世界王者に相応しいスター軍団です。

そのオールブラックスは単なる国の代表というわけではないということに最近気がつきました。

どういうことか、この世界最高のチームに入るためには人間味も優れていなくては選ばれないというのです。

これこそまさに紳士のスポーツの真髄たるもの。

オールブラックスが低迷した時、それは驕りだし、自国へのファンサービスを軽視したタイミングと全く一緒だったと言われます。

その後、ヘッドコーチとして就任したグラハム・ヘンリーが掲げたのが、「素晴らしい人間が素晴らしいオールブラックスになる」と言う意識改革であったと言われます。

つまり、人間味や紳士性を最も重視したチームが世界最強のチームなのです。

まさに紳士のスポーツラグビーの象徴ではないでしょうか。

参考文献:(「オールブラックス圧倒的マインドセット」 今泉清 著)

 

そして、オールブラックスとは話が少々ズレますが、日本の話。

2015年のワールドカップ、日本代表南アフリカ戦。

世界ランキング第3位、優勝経験2回の超強豪国に日本は勝ち、スポーツ史上最大の番狂わせ「ブライトンの奇跡」と呼ばれました。

ハリーポッターで有名なJKローリング氏(イギリス)もこんな小説は書けないと表現したほどの成果でした。

そして、4年の月日を経て2019年ワールドカップ日本大会では、日本代表は世界の強豪国に全勝してベスト8進出を決めました。

ベスト8進出を決めるスコットランド戦では、台風19号の接近に伴い試合すらできないのではないか?と不穏な空気が流れていました。

そもそも国民の生命危機が日本に迫っていたのですから。

試合会場の横浜は鶴見川の氾濫により、周辺地域は大きな被害を受ける可能性も高い中、スタッフ含め開催委員会が全力を尽くし、なんとか試合が実行されました。

 

その試合はスコットランドに歴史的な勝利をあげ、日本はベスト8進出という快挙を成し遂げたのは言うまでもないですが、それ以上にすごかったのは各選手が背負うもの。

それは各選手たちのコメントに現れています。

「避難所で震えている人に少しでも勇気を届けたい、被災された方々に元気を届けたい、希望を届けたい」と言う思いを背負いその試合に望んだ選手たちのコメントでした。

各メディアでも取り上げられ、コメントがある通り、日本代表選手はまさに国のために戦ったのです。

 

話は変わり、ラグビー・サッカー(どちらもフットボールと言われる)が大好きな英国人はフットボールの盛り上げりの歴史はなんと12世紀まで遡ると言われます。

その中でもラグビーは同じフットボールであるサッカーよりも紳士的で未だに中産階級のビジネスエリートが好んで鑑賞している、というエピソードをムック本より引用します。

現代はサッカーとラグビーというふたつのかたちで人気をさらに高め、共に大試合は国民的関心事になるまでに至っている。ただ、両フットボールを母国イングランドで観戦すると、明らかに観衆の醸し出す雰囲気が異なる。ありていに言うと、ラグビーの方が品がいい。ラグビーでは双方のファンが鯨飲して熱く拳を振り上げながらも、席を隣に楽しく観戦することができる。レフェリーに対して口角泡を飛ばして罵声を浴びせる光景にも、あまりお目に掛けられない。

引用:「サッカーキング9月号増刊 ようこそ、熱狂のラグビーワールドへ」 P.86

 

魚にも敬意を

 

ちなみにニュージーランド代表が試合前に披露する伝統の踊り「ハカ」はもともと大地や先祖と繋がるという意味合いが強く、選手同士やこれまでのオールブラックスの選手たちへの絆を表しているものです。

着目すべきは、「大地と繋がる」という部分。

ニュージーランド人が自然環境の中で、自分たちが生活している土地や伝統を大事にしている何よりの証拠ではないでしょうか。

この精神こそ、釣り文化に通ずるものを感じざるを得ないと勝手に解釈しています。

 

そして、ラグビーは相手に対して敬意をもち、紳士的に振るわなくてはこのスポーツは成り立ちません。

一般的に相手にタックルしても良いスポーツは限られており、このタックルというある意味危険な行為を行うにはスポーツと言えど、どうしても相手への敬意が必要不可欠になります。

もし、それを欠いた場合ただの暴力的スポーツとしてしか評価は受けなくなるでしょう。

冒頭のエピソードは、相手選手が僕に対して敬意を示してくれたシーンで、これこそがラガーマンが紳士的であると言われる所以なのです。

 

この相手に対して敬意をもち、紳士的に振るわなくては・・・という点はフライフィッシングにも共通しています。

魚に対して敬意をもち、紳士的態度でフィールドに立つ。

その象徴的な行為が「キャッチアンドリリース」であるというのです。

 

このキャッチアンドリリースという文化はイギリスからフライフィッシングがアメリカに渡り、日本にその考え方が伝わってきたものですが、ラグビーもイギリスからやってきたようにその文化の根本は変わらないのです。

ラグビーの試合で、イギリスのそれぞれ4カ国は、母国への愛情とプライドがぶつかりあい非常に激しい試合になることが多いですが、その態度や姿勢は紳士そのもの。

試合が終わってから、相手を讃えるシーンや敬意を持って接しているシーンがラグビーにはたくさんあります。

試合が終われば、ノーサイド。

敵も味方もないのです。

 

イギリスの紳士が作り出した文化・精神性が日本に様々なスポーツとして渡ってきているのですね。

全てのスポーツマンが見習うべき姿であるといつも感じています。

 

だから、いつも思うのは最近流行りのハタゲームにしても、バスフィッシングにしても、キャッチアンドリリースを推奨するなら、その根本となる文化を持つ国を知った方がより楽しくなるのではないかと思っているのです。

だから、ラグビーの試合を観戦してみたり、フライフィッシングの書籍を一度読んでみることをオススメします。

僕は結果的に魚に対する心構えが変わりました。

ぞんざいに扱ったり、無駄に殺生したりすることもなくなりました。

 

ちなみに下記の記事からの引用ですが、ニュージーランドの釣り人は日本の釣り人を尊敬しているそうです。

参考:我が人生を狂わせた鱒族とは ー森の生活からみる未来 第83回

不思議な繋がりですよね。

 

凡事徹底

 

世界最強のチームと言われるニュージランド代表「オールブラックス」の強さの秘密に凡事徹底と言うことが挙げられます。

つまり、ラグビーの基本プレーであるパス、キック、キャッチ、タックルなどを愚直に練習し、習得する文化があります。

基礎練習を徹底して積み重ねていることが歴戦の勝利の要因となり、チームの文化となっているのです。

 

一方、フライフィッシングにも同じような文化があります。

軽いフライを飛ばすために糸の重さを利用し、水面へ届けるためにもキャスティング技術の基本は極めて重要です。

そのキャスティングを実際のフィールドで狙ったところに一発で決めるために練習が必要になるのです。

また、フライフィッシングは自然の中でのスポーツ。

自然の理解なくては成立しないのは前述した通りで、森羅万象の理を知るために日々努力が求められるスポーツでもあるのです。

この基本的な姿勢を凡事徹底できなくてはフライフィッシングというスポーツを楽しむことは難しいかもしれません。

昨今釣り業界にある「初心者でも簡単に!」なんてフレーズはフライの世界では通用しないのかもしれません。

ただただ、基本を凡事徹底し、魚と真摯に向き合う姿勢こそが重要であり、中身は違えどラグビーの練習と通づるものが大いにあります。

 

日本でもスポーツフィッシングとしてのバスフィッシング流行り出した時、日本バス界の重鎮田辺哲男氏はこうした言葉を何度も言っています。

「キープキャスティング」

継続してキャスティングを続けることを徹底して行うことは決して簡単なことではありません。

釣りは遊びと捉えられる側面が非常に強いですがスポーツとして捉えた時、キャスティングを続けられないのはメンタルの弱さでしかありません。

キャスティングを繰り返す愚直さはスポーツ的な一面があると僕は思います。

 

一流のスポーツマンの試合の中でのコミュニケーションは「頑張ろう!」とか「走り切ろう」とかそういうものではなく、ロジカルなコミュニケーションであったりします。

「相手がこうした動きをするから、こうして対処してこう反撃しよう」という感じで、より具体性が高いです。

具体的に話すためにも普段から細かいことをコミュニケーションで確認しておく必要があり、常に考えて行動しておかなくてはなりません。

ルアーフィッシング、フライフィッシングにおいても対人間ではないものの、常に自然とコミュニケーションする感覚で状況を理解し、論理的に考えて行動する努力が必要だと思います。

 

結局、ルアーにおいてもフライにしても釣りが上手な人は、ある程度の論理的な思考で取り組んでいるのではないかとあらためて感じています。

 

スコットランドと日本

 

2019年日本開催のラグビーワールドカップで、伝統国の中で、唯一ベスト8に上がれなかったイギリスの国があります。

スコットランドです。

イギリスからは4つの国が参加しており、スコットランドを除くイングランド、ウェールズ、アイルランドは全てベスト8進出を決めています。

ラグビーの母国としてのスコットランド敗退はスコットランド中に大きな衝撃とため息を吐かせました。

前述した通り、そのスコットランドを最終戦で打ち負かした国こそ、我が国日本なのです。

 

2015年のラグビーワールドカップでは、スコットランドに破れて初のベスト8を阻まれました。

まさに因縁の対決でしたね。

 

ちなみにフライフィッシングを栃木県に一番最初に日本に運んできた人物もスコットランド人であるグラバー卿なのです。

不思議な繋がりはもう少しあるのですが話が長くなりすぎたのでこの辺で!笑

 

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